AI×DX Weekly

Vol.26 | 2026年9月21日号

「AI人材がいない」を、越える一週間。

今週は、中小企業のAI活用における「人材不足」の実態と、その乗り越え方の両方が見えた一週間だった。クラウドワークスの調査では、AI推進者が「足りている」と答えた企業は回答企業の11.1%にとどまり、採用・育成・外注のいずれの手段も壁にぶつかっている様子が見てとれる。一方で、印刷会社が自ら実践したAI運用ノウハウをそのまま外販するクロスウイングの新サービスや、専任者なしでも試せる無料のデスクトップAIエージェント「Kari」など、「人を増やさずに始める」選択肢も同時に増えている。まずは自社のどこにAIを使うべきかを整理するところから、始めてみたい。


📰 今週のAI×DXニュース TOP3

NEWS 01

AI推進者「足りている」中小企業はわずか11.1%——クラウドワークス調査

SME AI Adoption Survey / CrowdWorks

株式会社クラウドワークスは2026年9月16日、従業員5〜299名の企業の経営者・役員・部長クラスを対象にした「中小企業のAI活用レベル調査」(本調査576名)の結果を公表した。AIを利用している企業は59.6%、そのうち8割は個人利用かチャット機能の利用にとどまり、業務システムと連携して一部業務を自動化している企業は19.1%だった。AI導入を主導する「AI推進者」が「足りている」と答えた企業は11.1%で、確保を検討した企業でも採用・育成・外注のいずれも半数近くが中断・未着手だった。ただしこの調査はAI活用レベル別におおむね同数の回答を集めた設計のため、各比率は中小企業全体の構成比を表すものではない。数値そのものより、採用・育成・外注のどの道も途中で止まりやすいという傾向を、自社の状況と重ねて読むのが実務的だろう。

▶ 出典: 株式会社クラウドワークス 公式プレスリリース(2026年9月16日)

NEWS 02

相槌も割り込みも自然に——AIdeaLab、国内初のGPT-Live採用AI受電サービス

AI-Powered Call Reception / AIdeaLab

株式会社AIdeaLabは2026年9月14日、AI受電サービス「AIコールセンターくん」の正式提供を開始した。国内で初めてOpenAIの音声モデル「GPT-Live」を採用し、相槌や会話の割り込み、間の取り方まで人間同士に近い自然な応対を実現した点が特徴で、既存のCRMや業務システムと連携した注文照会や予約受付・変更、必要に応じた有人オペレーターへの引き継ぎまで一連の業務として設計できる。夜間など有人対応が難しい時間帯の一次受付にも使えるため、専任の電話担当者を置きにくい中小企業にとって、問い合わせ対応の底上げになる選択肢だ。料金は個別見積もりだが、無料デモ・トライアルも用意されている。

▶ 出典: 株式会社AIdeaLab 公式プレスリリース(2026年9月14日)

NEWS 03

社員25名の印刷会社が培ったAI運用ノウハウ、クロスウイングが中小企業向けに外販

Hands-on AI Playbook / CrossWing

株式会社クロスウイングは2026年9月16日、中小企業向けの新サービス「AI業務組み込み支援」の提供を開始したと発表した。代表自らが経営するグループの印刷会社(社員25名)で、毎朝の経営ブリーフィングや受注予測、ホームページ改修、月次のセキュリティレポート作成までを日々AIで回してきた実運用のノウハウを、そのまま商品化した点が特徴だ。市販のAIツールの販売・再販は行わず、「現状整理→設計→試運転→引き渡し」の流れで、御社の仕事のどこにAIを組み込むかという型をつくり、担当者に残すことを商品とする。2026年9月にはIT導入支援事業者にも採択されており、補助金を使った導入も相談できる。「ツールを入れたが定着しない」という中小企業の悩みに、身近な実例で応える一件だ。

▶ 出典: 株式会社クロスウイング 公式プレスリリース(2026年9月16日)

🛠️ 今週のおすすめツール・リソース

TOOL 01

AI活用棚卸しレポート

どこにAIを使うべきかを可視化する棚卸し

AI Readiness Assessment / Business Process Audit

Zept株式会社が提供する、企業の業務を「作業単位」まで分解し、どこにAIを活用すべきかを可視化するコンサルティングサービス。経営課題→部署→業務→作業→工数・課題という階層で整理したうえで、各作業を「削減する・自動化する・高度化する・新しくつくる」の4方向に分類し、実行ロードマップまで提示する。今週のNEWSで浮き彫りになった「AI推進者がいないから何から始めればいいか分からない」という悩みに、AIツールの選定より先に手を打つ形だ。

こんな人におすすめ:AI推進者を新たに採用・育成する前に、まず自社のどこから手をつければいいか整理したい経営者・DX担当者

料金目安:Small プラン20万円〜Enterprise プラン120万円〜(対象部署数・業務数など「調査範囲」に応じた4プラン)

日本語対応:あり

▶ Zept 公式サイト

TOOL 02

Kari

手元のファイルと一緒に働く無料デスクトップAI

Desktop AI Agent / Local File Assistant

Windows・macOS・Linuxで動くデスクトップAIエージェントアプリ。すでに契約しているClaudeやChatGPTのサブスクリプションにそのままサインインして使えるため、API従量課金の追加契約なしで、PDF・Word文書の要約・翻訳やPowerPointのドラフト作成、Excelデータの集計・可視化を手元のファイル上で進められる。Web APIやMCPが用意されていない従来型のWebシステムも、内蔵ブラウザーの自動操作で情報収集・分析の対象にできる。

こんな人におすすめ:すでにClaudeやChatGPTを個人契約しているが、追加のAPI連携コストや設定なしに、日常のファイル作業をAIに任せたい担当者

料金目安:個人・100名未満の組織はコミュニティライセンスで無料(100名以上は最長60日間の無償評価利用、以降は法人ライセンスで要問い合わせ)

日本語対応:あり(UI・公式ドキュメントとも日本語が第一言語)

▶ Kari の詳細はこちら

📖 用語解説・学習コーナー

シャドーAI / Shadow AI

一言でいうと:「会社が把握・許可していないまま、社員が独自に使っている生成AIの利用状態」

今週のクラウドワークス調査では「AI推進者が足りない」ことが最大の障壁として浮かび上がったが、その裏側で起きやすいのが「シャドーAI」だ。東京商工会議所が2026年6月に公表した「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」でも、生成AIの活用状況について「使用していない(把握していない)」と回答した企業が14.4%あった。主に東京23区内の中小企業1,272社が回答した調査で、この設問の集計対象は、デジタル活用がほとんど進んでいない層を除いた959社(全回答の約75%)。全国の中小企業の比率とは読めない。それでもこの区分には、会社として使っていない企業と、現場の利用を会社が把握できていない企業の両方が含まれている。会社支給の端末ではなく私物のスマートフォンや無料版のチャットツールを使い、業務資料や顧客情報をそのまま貼り付けてしまう、といった形で広がりやすい。従来の「シャドーIT」(未承認のクラウドサービス利用)と同じ構造だが、生成AIは入力した情報がそのまま外部のモデルに渡る点で、情報漏洩のリスクがより直接的だ。

ビジネスでの使いどころ:シャドーAIは「取り締まる」より先に、まず「誰がどのAIを何に使っているか」を社員に申告してもらうところから始めると、抵抗感なく実態を把握しやすい。禁止するだけでは現場は隠れて使い続けるだけなので、安全に使える公式ツールを用意したうえで、そちらへの移行を促すほうが現実的だ。

▶ 出典: 東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」集計結果(2026年6月17日・PDF)

💬 編集者コメント

今週は「AI人材がいない」という共通の悩みに、別々の角度から答えが出てきた週だった。クラウドワークスの調査で推進者が「足りている」と答えた企業は回答企業の1割ほど。そこへ、AIdeaLabは電話の一次受付を、クロスウイングは印刷会社で培った運用の型を、それぞれ引き受ける形を示した。人を一人増やすより先に、任せられる仕事のほうを外に出す。個人的には、この順番のほうが中小企業には現実的だと思う。

📌 外に出せる仕事かどうかは、一度書き出してみないと見えてきません。次号は来週月曜にお届けします。

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