AI×DX Weekly

Vol.27 | 2026年9月28日号

全部が整う前に、動き出す一週間。

今号は、制度・支援サービス・現場のルールづくりのそれぞれから、「本番が整う前に動く」という共通の姿勢が見える3本を選んだ。中小企業庁は、消費税率引下げに備えたレジ更新について、補助金の公募要領公開前でも事前着手を認める制度を9月15日に発表した。MILIZEは、中小企業の補助金・助成金申請を支援するAIサービスの検証版を開発し、TAMA協会と東京都の助成金の実案件で検証を始めた。デジタルプロモーションは、禁止リストだけでは生成AIが使われなくなるという自社の経験をもとに、中小企業向けのAI活用ミニ教材を無料公開した。


📰 今週のAI×DXニュース TOP3

NEWS 01

消費税率引下げに備え、レジ更新の「事前着手」を補助対象に――中小企業庁

Advance-Implementation Subsidy / Smart POS Registers

中小企業庁は2026年9月15日、「デジタル化・AI導入補助金」において、従来型レジからスマートレジへの入替えやPOSレジの改修を対象に、公募要領の公開を待たずに導入・改修を進めておける「事前着手制度」を措置すると発表した。令和9年(2027年)4月から消費税率を引き下げる方針が大綱の閣議決定で示されたことを受けた対応で、9月15日以降に行った導入・改修が、後日申請する補助金の対象になりうる。補助金の事務局サイトも、9月24日更新のお知らせで同じ内容を案内しており、申請受付は2027年1月頃の予定としている。レジ更新を補助金の公募スケジュールに縛られず前倒しできる一方、対象経費や補助率など制度の詳細は、事務局が後日公開する公募要領で示される。

▶ 出典: 中小企業庁「変化の時代に対応できるスマートレジの導入支援(事前着手制度)」(2026年9月15日発表)

▶ 出典: デジタル化・AI導入補助金2026 事務局サイト お知らせ(2026年9月24日更新)

NEWS 02

補助金・助成金の申請書づくりをAIが支援――MILIZEが検証版を開発、TAMA協会と実案件で検証開始

AI Subsidy Application Assistant / Verification Pilot

MILIZEは2026年9月24日、中小企業の経営・財務の実務をAIで支える「AI-CFO」構想の第一弾として「AI補助金・助成金申請支援」の検証版を開発し、TAMA協会(一般社団法人首都圏産業活性化協会)と連携して、東京都の助成金(ゼロエミッション推進、製品改良支援事業等)の実案件を通じた検証を始めたと発表した。本サービスは、制度要件の該当判定や審査観点に沿ったヒアリング、申請書の下書き作成、数値の整合確認、公式様式への転記までを一つの環境で担うもので、AIが作成するのは確認前の下書きにとどまり、採択可否や要件充足を判定・保証するものではない。想定する利用場面は、申請企業自身よりも、TAMA協会のような支援機関をはじめ、申請に伴走する支援事業者の実務にある。決算書や見積書、ヒアリング内容がメール・Excel・クラウドストレージに分散し、資料の版管理や締切直前のレビュー集中が、支援事業者が扱える案件数の上限をつくっていた。現時点ではTAMA協会との検証段階にあり、一般向けの提供開始や対応地域・料金は明らかにされていない。

▶ 出典: 株式会社MILIZE 公式プレスリリース(2026年9月24日)

NEWS 03

「『入れちゃダメ』を配ったら、誰もAIを使わなくなった」――デジタルプロモーションが中小企業向けミニ教材6本を無料公開

Generative AI Adoption Playbook / Free Mini-Guides

デジタルプロモーションは2026年9月25日、生成AIの活用や店頭サイネージ運用で止まりやすい論点を整理した「DPミニ教材ライブラリ」を無料公開した。教材は全6本(各10枚)で、生成AIの社内ルール、導入する業務の選び方、AIの成果物の検品を扱う3本、店頭サイネージの運用設計と更新ネタの回し方を扱う2本、数字を見る会議の進め方を扱う1本で構成される。社内ルールの教材では、完璧なルールを作ってから始めることを失敗例の一つとして扱っており、同社は教材を、どの業務から始めるかや社内にどこまでルールを置くかを決める際のたたき台として使うことを想定している。内容は、同社が自社の業務で実際に試し、止まり、直してきた実践と、店頭サイネージ運用を支援してきた現場知見をもとにまとめられている。閲覧にはメールアドレスの登録が必要(会社名の入力は任意)で、登録すると閲覧用URLが自動返信され、社内共有用にPowerPointとPDFの両方を保存できる。

▶ 出典: デジタルプロモーション株式会社 公式プレスリリース(2026年9月25日)

🛠️ 今週のおすすめツール・リソース

TOOL 01

生成AI利用ガイドライン ジェネレーター

質問に答えるだけで社内AIルールが無料で完成

AI Governance / Internal Policy Generator / No-Code Document

WHITE株式会社が無料公開するツールで、会社名や利用中の生成AIサービスなど画面の質問に答えるだけで、入力可否マトリクスや禁止事項、AIエージェント運用の特則まで盛り込んだ社内ガイドライン(本文10章+別紙5点)をWord形式で生成できる。入力情報はブラウザ内で処理され、外部のサーバーには送信されない。JDLAのひな形や経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」など公的資料を参考に設計されている。今週のNEWSで触れた、禁止リストを配るだけでは社内でAIが使われなくなるという悩みに、たたき台づくりの面から応える一手だ。

こんな人におすすめ:情報システム部門がなく、「禁止するだけ」から抜け出せていない中小企業の総務担当・経営者

料金目安:無料(0円、会員登録不要)

日本語対応:あり

▶ 生成AI利用ガイドライン ジェネレーター の詳細はこちら

TOOL 02

SD補助金

AIが使える補助金・助成金を無料診断

Subsidy Matching AI / Grant Application Support

ストラテジーデザイン株式会社が運営するサービスで、業種・規模・やりたいことを入力すると、AIが数千種類の補助金・助成金から自社に合う候補を診断し、対象要件・締切・必要書類を整理する。申請書の骨子案もAIが自動生成し、実際の申請支援は提携する行政書士(補助金)・社労士(助成金)につなぐ。

こんな人におすすめ:自社に使える補助金・助成金があるか、まず自分で当たりをつけたい経営者・総務担当

料金目安:AI診断は無料(0円)。専門家への申請サポートは案件ごとの見積り(要問い合わせ)

日本語対応:あり

▶ SD補助金 公式サイトはこちら

📖 用語解説・学習コーナー

PoC(概念実証) / Proof of Concept

一言でいうと:「本格導入の前に、小さく試してうまくいくかを確かめる検証段階」

今週のMILIZEの「AI補助金・助成金申請支援」は、一般向けに提供する前に、TAMA協会という特定の支援団体・東京都の実際の助成金案件に絞って検証を始めた段階にある。これはPoC(概念実証)と呼ばれる進め方で、「アイデアが机上では正しそうでも、実際の業務フローに合うかは分からない」という前提に立ち、小さな範囲で試してから本格展開を判断する。範囲を絞ることで、失敗したときのやり直しコストを小さく抑えられる一方、PoCの成功がそのまま全社導入・全国展開の成功を意味するわけではない点には注意が必要だ。

ビジネスでの使いどころ:新しいAIツールやサービスを検討する際は、いきなり全社導入・全業務適用を目指すのではなく、まず一部の部署・一部の案件だけで試し、期待した効果が出るかを確認してから展開範囲を広げると、投資判断のリスクを抑えられる。


💬 編集者コメント

今号の3本には、「全部が整うのを待たずに、どこから動くか」という問いへの三者三様の答えが並んだ。中小企業庁は、公募要領の公開を待たずにレジ更新の事前着手を認めた。MILIZEは、一般向けに提供する前に、TAMA協会の実案件で検証を始めた。デジタルプロモーションは、完璧なルールを先に作ることを失敗例に挙げ、たたき台になる教材を公開した。どれも、整うのを待たずに動ける形を先に用意していて、AI活用を始めるときにも参考になる姿勢だと思う。

📌 全部を一度に変えようとせず、まず一つの業務や案件から試せないか、書き出してみる。次号は来週月曜にお届けします。

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